Miwa Shioya 塩谷美和's Blog
ヘルプ 〜 The Help

時が経つのは早いですね!今から10年前の2011年公開で、日本では翌年2012年に公開された映画です(つい最近にように感じます)8月22日に「サマー・オブ・ソウル」応援企画として、この映画のZoomディスカッションがあるので、一足先に頭を整理するために感想をブログにしておきます♬
★内容は観た人向けでネタバレありなのでご注意ください!
”The Help” とは、お手伝いさん、メイドのこと。1960年代の公民権運動下、ジムクロウ法が残る南部で家政婦として働く黒人女性を描いた映画ですが、黒人差別だけではなく、男女格差、女性が社会に進出して行く時代を背景に、女性の姿を中心に描いています。実話ではないですが、もちろん同じようなことは沢山あったであろうし(パイのくだりはどうか分かりませんが)また、もっと悲惨なこともたくさんあったでしょう。

映画公開前は、私はてっきりウーピー・ゴールドバーグ、シシー・スペイク主演の「ロング・ウォーク・ホーム」(1994年日本公開)のリメイクかと思っていました。それかもしくは、ローサ・パークスのバスボイコットに関連する映画かと。しかし全く別物で、それはそれで大変楽しめました!ただ、シシー・スペイクが出演しているので、オマージュしているな、と感じたのはきっと私だけではないはず。

「The Help」は、舞台はミシシッピー・ジャクソン。5年くらい前に、ジャクソンにある神学校に在学中の友人家族の家に1週間滞在させてもらったことがあります。映画の一場面でも出てくるCity Hallにも連れて行ってもらいました。友人も言っていましたが、観光スポットが少ない街でした。学校近辺は黒人地域で治安があまり良くなくて、友人曰く、たまに銃声が聞こえる、という事で敷地内から出るのは絶対にNG。と言うことで、ゆっくりして、南部フードを楽しみ、メンフィスまで連れて行ってもらいました。

映画ではミシシッピー出身でNAAPC(全米黒人地位向上協会)支部局長、 メトガー・エヴァースの暗殺(1963年6月12日)が報じられるシーンが描かれていましたね。ここから公民権運動に携わるリーダーたちが立て続けにに暗殺されていきます。

メイド達は、家事だけではなく、子育ても任されていました。母としての役目、それは食事を与えたりオムツを変えるだけではなく、一人の人間としてのアイデンティティや自立心と自尊心を教えるという本当に大切な役目を果たしていたことをこの映画から知りました。
働く女性の先駆けとも言えるスキーターの乳母、コンスタンティンは「自分を蔑むのをやめなさい、それは男のいじめっ子と同じことをしているんだよ」と励まし、

エイブリーンは「あなたは優しい子、あなたは賢い子、あなたは大切な存在」
”You Is Kind, You Is Smart, You Is Important” と実の母に代わって子供を抱っこし、世話をして教えます。
こんな小さい時から、しっかりと言葉で育て教えてもらえていたら、人生変わったよなぁ、、、と思ってしまいました。しかし、「いずれ親と同じになる」とエイブリーンが映画で言っているように、メイドに懐いていた子供も、大人になっていくと、結局黒人差別をする悲しい現実です。「Selma」でもMLKが最後にそのことを演説で語っていたのを思い出します。子供は大人の嘘に染まって同じ大人になっていくのです。
しかし、それでも、自分を差別している人達の子供にこんな素晴らしいことをできたのは、神に対する信仰、試練が彼女達を成長させたのでしょうか。教会シーンで少し納得いきました。

牧師のメッセージで(ちなみに「Selma」でMLKを演じた、デイヴィッド・オイェロウォが牧師役です)出エジプト4章から、
「勇気とは、モーセがうまく口がきけなかったように、肉体の弱さ超えて正しい行いをすること。正しい行いとは、人を愛すること。イエスの十字架の犠牲の愛のように、自らを危険にさらす覚悟で愛すること。同胞のため、兄弟姉妹、隣人のために。そして敵をも愛すること!敵を愛せたら、それが勝利です!」そして聖歌隊が「Victory is mine」を歌い始めます。

「Victory is mine」Youtube↓
「今日、勝利は私のもの!私はサタンに退けと言った!勝利は今日、私のもの!」
Victory is mine, Victory is mine, Victory today is mine.
I told Satan to get thee behind, Victory today is mine.

同じように、スターキーからの取材を受ける重要な決断するのも、このシーンでした。取材を受けて告白する事で身の危険があるかもしれないけど、自分の息子が受けた不当な扱いを思いつつも、エイブリーンは兄弟姉妹のために立ち上がりました。

多くのメイド達の勇気の発言によって本は出版され、好評を得ますが、ヒリーが例のミニーのパイ事件の侮辱を晴らそうと躍起になります。
ヒーリーは悪役の代表としてとても分かりやすく描かれています。人をコントロールして自分の言いなりにさせようとするリーダーで、黒人差別は先頭で指揮し、身近で黒人の子供が苦しんでいるのに、アフリカの子供達を支援するということを平気でやってしまう、その矛盾を全く理解できていない女性です。ついにエイブリーンは堪忍袋の尾が切れて、

「Godless woman」つまり神への信仰を持たない女性と言い放ちます。
日本語訳では「あんたは悪魔だ」と訳されていました。どう言った意図で訳したかはわかりませんが、私達は「悪魔」と聞くと、ホラー映画に出てくるような角や牙が生えていて、人間を噛み殺すような化け物のような存在と思いがちです。実は、悪魔はもっとしたたかで、私達の心を騙し、自分は価値のない存在だとか、人より優っているとか囁きかけ、人間が互いに憎み合い争いあうようにしかけ、分裂させ、悪事を正当化させ、人を左右し、精神的にも霊的死に追いやる存在です。なので、「悪魔」というのは、ある意味ハマっているのかもしれません。それに「Godless」は、自分が信仰深いと思っているヒーリーにはかなり打撃のある言葉だったのかもしれないですね。その後に、「疲れませんか?」とも言われてしました。本当に、偽りを保ち続けるのは疲れることだと思います。
真実を言ってしまったエイブリーンは、その事によってメイドをクビになります。仕事を失った後悔よりも、「赦す」このとの難しさを心の中で自答します、、、、
しかし「いずれにせよ真実を語ることで解放された」と言い、前向きに新しい人生を歩き始めます。まっすぐな道をただひたすら前進し続けるエンディングです。
映画の流れでは、息子の遺言通り、エイブリーンはこの後、作家になっていく感じですね。
書く事によって、本当の勝利を自分のものにしてくのでしょうか。
そして、「サマーオブソウル」はまさに、音楽によって、語り、解放されていた彼らのライブだったと思います!
ちなみに、エンディングロールで流れたメアリーJブライジが歌う主題歌の後に流れるのはMavis Stapleの 「Don’t knock」でした!
Youtube↓
このシーンが好きです!

【まとめ】
白人、黒人、女性、男性、働く女性、主婦、どの身分が高く、低く、どちらかが優れていて、劣っているとは、決して人種や性別で決めることができない。
人一人一人がどう考え、生きるかによって、その人の価値は決まる。なので、環境や相手のせいにするのではなく、自分でしっかり立つ事ができるように。
そして、最も大切なのは、名誉や地位ではなく、他者に対する犠牲の愛と赦し。
人は試練と逆境の中で真実を見出すことができるのかと思いました。
牧師のメッセージに、この映画のテーマが込められていたかと思います。
行動にしていくことは、話す事、書く事の何百倍も大変で難しい、と思う今日この頃です。
見失ってはいけない、、、そう痛感した映画でした!
Thank you Jesus!